電子書籍で出版社は潰れるのか

日本が2年以内に電子書籍元年を迎えることはない【湯川】という記事を読みました。湯川さんはメディアの未来を見据えて独立されたので、さすが落ち着いて見られています。この記事に書かれていることはまったくもって同意なのでそこは置いとくとして・・・

先日、大手IT系出版社の偉い人と会ったときにも話題に上りましたし、昨日また出版系のお仕事をされている方とも話しましたので、電子書籍で出版社は潰れるのかについてちょっと書いてみます。

Amazon に続き、iTunes Music Store が電子書籍の取り扱いを始めるわけです。これによって誰もが出版社を通さなくても出版ができるようになっちゃいます。出版社が無くなっちゃうんじゃないかという心配なわけです。

日本の場合、本屋さんの店頭に本が並ぶためには大雑把にまとめると、著者=>出版社=>東販・日販=>本屋という流れを減る必要があります。メーカー=>問屋=>小売店という流れがここにもあるわけで、ご他聞にもれずこれが崩壊するということで、問屋さんは大騒ぎです。

Amazon や iBooks は巨大な小売店です。ここが取り扱ってくれるなら、出版社や東販・日販を通さなくても確かに問題なさそうに見えますが、本当にそうなのでしょうか。

iTunes App Store は同じ仕組みで、誰でもアプリを作って売ることができます。一気にアプリ販売の敷居が下がったことで、大量のアプリが販売されました。結果としてひとつひとつのアプリは埋もれてしまい、作った人は全うな利益を得ることが出来なくなりました。(全うな利益を得られるほどのアプリじゃなかった話は置いといて)

Amazon や iBooks は巨大な小売店ですが、単なる買い物カゴシステムです。現実の本屋さんの場合は在庫できる量に限りがあるので仕入れを絞らねばなりませんが、電子書籍には仕入れの限界がないので何でも飲み込んではくれます。しかし、どちらも目に付くところに陳列してくれる量には限りがあります。

そこで力のある問屋の出番なわけです。アプリの場合は、やはりブランドのあるゲームメーカーが有利です。ナムコやコナミ、ゲームロフトのゲームなら売れ行きも堅いのでバナーも張ってくれますが、個人が最初に作ったゲームではそうもいきません。売りたければ力のあるブランドの名前で販売してもらうか、自分でブログなどで宣伝するかになります。

電子書籍でもきっと同じことになるでしょう。ネットに強い一部の有名人、勝間さんや小飼さんは自力で問題ないです。でも普通の人には自力じゃ無理です。たとえマージンを取られたとしても、出版社を通してもらうほうがいいという結論になると思います。

東販や日販は物流会社ですから、Amazon や iTunes と著者の間に挟まることはできないでしょう。やるのであれば、多くの出版社とのコネクションを生かし、新たな小売店の仕組みを作り上げるしか生き残る道はありません。でもたぶん、企業体質が無理です。

出版社はかなりチャンスがあると思います。IT系専門の出版社は、先の理由で直接やられてしまうので厳しいかもしれませんが、そうでなければ電子書籍対応を早くすませたところから、どんどん有利になっていくでしょう。まわりの様子を伺っているようでは、間に合わないと思います。

それと、電子書籍事業に進出しようとしているIT系企業がいます。私はこういうところにはチャンスは薄いと思います。出版社の仕事は本を印刷することじゃないです。電子ブックのプログラミングが出来るからといって、出版社に取って代われるわけがありません。

しかし、いつでもこの最初の混乱の時期にはすばらしいチャンスがあります。まったく無名だった人が電子書籍でメジャーになるでしょうし、新興IT系出版社が本当のノウハウを手に入れる前に、既存の出版社が気づけるか、いろいろとワクワクする時代ですね。あ、既存の出版社に電子書籍化のお手伝いを早速営業している人、もちろんあなたが一番正解です。