井戸ポンプに「故障かな」と感じる三大症状は吸い上げ不良・異音・漏水であり、いずれも原因を段階的に切り分ければ自力対処の可否が判断できる。まず吸い上げ不良は呼び水不足や吸込側配管の空気混入が最頻出で、起動後に圧力計が振れず吐出管が温まらない場合はフート弁の砂噛みや逆止弁ゴムの劣化が濃厚だ。呼び水を補充しても負圧が立たなければ吸込継手やオーリングの目視点検と石鹸水リークテストで泡が出る箇所を特定し、シールテープを3巻き以上で巻き直すと改善しやすい。浅井戸ジェットならノズルとベンチュリの砂詰まりでキャビテーションが起こり揚程が一気に落ちるので、ポンプヘッドを外し清水逆洗して内部を歯ブラシで研磨すると流量は概ね回復する。深井戸サブマーポンプでは揚水管逆止弁の座面摩耗や水位低下による空運転が原因となるため、電流値が定格の半分以下に落ちたら直ちに電源を切り、3時間以上静置して水位が戻るか確認してから再始動し、同時に水位センサーを井戸管に追加すると再発防止になる。次に異音はメカニカルシール部からの「ジー」という擦過音、軸受摩耗による「ゴロゴロ」という転がり音、キャビテーション起因の「パチパチ」という空洞崩壊音で大別でき、ドライバーをハウジングに当てて骨伝導で聞けば発生位置が把握しやすい。擦過音はシール面への泥砂侵入が主因で、早期に交換しないと漏水に直結するので補修キットを取り寄せシャフトを傷つけないようパーツクリーナーで洗浄後、新品シールをシリコングリスで軽く潤滑して装着する。軸受音はベアリングのグリース切れが前兆で、数十時間以内にガタが出てインペラがケーシングに接触しモーター焼損リスクが高まるため、型式を控えベアリングプーラーで抜き取り、高速用途のC3隙間品へ交換し回転方向に手で回して音が消えたことを確認する。キャビテーション音は吸込ヘッド不足が根本であるためストレーナ清掃と揚程計算の見直し、場合によっては吸込管径をワンサイズ上げることで音だけでなく効率そのものも向上する。最後に漏水はメカニカルシール劣化、配管ネジ部のシール材硬化、ケーシング腐食孔の3系統に分けられる。メカシール由来はポンプ底部から細いしぶきが飛び散り運転停止後も滴下が続くのが特徴で、シール面とスプリングをセットで更新すれば再発率は低い。ネジ部は冬季凍結や振動で締付が緩むことがあり、口金を緩めて古いシールテープを除去し新たにフッ素系シール材を塗布して規定トルクで締め直すと止まるケースが多い。ケーシング腐食は鋳鉄製ジェットで長期塩害に曝された場合に起こり、小孔程度なら金属用エポキシパテで裏打ちし外面をラバーコートすれば暫定運転できるが、孔径が5ミリを超える場合や複数箇所ならケーシング交換が現実的だ。これらの対処を行う際は必ずブレーカを落として感電防止し、再組立後は圧力計と電流計を同時監視して「初期圧力到達時間」と「定格比90〜110%以内の運転電流」を正常指標として記録し、異常値が2回連続した時点で専門業者の再診断を依頼する運用ルールを設定すると、大規模故障の前に予知保全が可能となりポンプ寿命を大幅に延ばせる。